脚本考えてみたその② Nホーム アパート営業の地獄の黙示録

柄にも無く過去に考えた演劇の脚本

アパート建築のNホーム~地獄の就労録~

彼は、宮本和真36歳。妻(36)と子(6)が居るが、突然会社がつぶれてしまった。時は2008年。リーマンショックのさなか、就職するのは容易ではない。面接に行くがなかなか就職できずにいるさなか、とあるコンビニで宮本が求人雑誌を見ると、こんな見出しが

「未経験可!やる気次第で昇給!初任給27万8000円。」

特段資格もない宮本にとって魅力的な給料だった。ただこの不況真っ只中、こんな良い話が有るわけはない。そんな風に思うのも裏腹に、宮本はこの求人にのっているNホームに履歴書を送付する。

宮本「全く、もう失業して6ヶ月か・・・厳しいよな。」

里恵(宮本の妻)「焦らないで。私も何とかパートでしのぐから。焦って変なとこに就職したら余計だめだから」

宮本「もうこれ以上、職歴欄に転職歴増やすわけにもいかないしな。」

里恵「ねぇ?次に面接行くところ初任給27万とかだっけ?」

宮本「あぁ。うん。良いだろ?」

里恵「なんか何でこんな不況の中、こんなに給料良いんだろ?」

宮本「営業職って書いてあるし、やっぱきついんじゃないかな。初めは休みなんて取れないだろうね。きっと。」

里恵「あんまり変なとこだったら、断るもの手だよ?」

宮本「もうそんな贅沢も言ってられないよ。明日は面接だし、気合入れていくからさ」

Nホーム。CMもばんばんやっているアパート建築会社の最大手である。明るい感じでタレントが「NホームNホーム。夢のアパート経営のNホーム♪」と言うCMが流れている為、世間一般のイメージは悪くない。ただそれは上辺だけの物で、中に何と恐ろしいことが含まれているか今の宮本は知る由もない

面接会場

宮本「初めまして!宮本和真です」

面接官「うーん、宮本和真さんですね。」

宮本「はい!」

面接官「まぁね。うちって結構入ったりやめたりが多いからさ・・・うちの会社の仕事って理解してる?」

宮本「はい!アパ―と建築の営業と聞いております!」

面接官「どういうとこ廻るか分かってる?」

宮本「はぁ・・・えぇっと・・・」

面接官「土地持ちの地主を回るわけ。それも朝から晩まで。それで地主にアパート建てさせるわけね。仕事取って来れなかったら会社に居づらくなるから。だから出入りが激しいわけね。宮本さん耐えられる?」

宮本「はい!!!そのつもりで来ました!!」

面接官「あぁ。そう・・・それと多分まともに休み取れないからうちは。」

宮本「は・・はぁ」

面接官「一応36協定とか、労働法とかね。そういうのうちは関係ないから。」

宮本「・・・・」

面接官「それでも頑張れる?」

宮本「はい!!!頑張ります!!!!」

これを以て宮本は採用された。

帰宅後

宮本「Nホーム採用されたよ」

里恵「え?」

宮本「何だよ。もっと喜べよ。」

里恵「・・・何かNホームの営業ってネットとかで見たけど、あまり良い事書いて無かったよ。」

宮本「しょうがないだろ。いまどきこういう仕事しかないんだから」

里恵「そう・・・」

能天気な主人に対して、妻の里恵はどうしても、不安が拭い去れなかった・・・

入社初日始業9時の30分前に宮本は出社した。ただすでに他の社員たちは会社に来て、掃除したり仕事したりしていた。それを見て慌てて事務所に入る宮本。

先輩社員・田中「なんだ?今日は居る宮本っててめぇか?」

宮本「はい!今日からお世話になる宮本です」

田中「おめぇも良い根性してるな。新人なら気を利かせて一時間前には出社するもんだぞ。」

宮本「え・・・それは知りませんでした!申し訳ございません!」

田中「まぁ初日だから良いか。」

宮本「あの・・・この1時間早く来る分には手当などつくんでしょうか?」

田中「はぁ???てめぇ馬鹿か!そんなもんある訳ねェだろ!!!」

宮本「大変申し訳ありません!!!!」

そして朝礼が始まる。

そして、それぞれ社員たちが、今日の目標と昨日の報告をする

社員A「私は!!!!今日は3件の見込みを獲得する予定です!!!!」(絶叫しながら)

田中「昨日はどうした?」

社員A「はい!!!昨日はゼロでした!!!!」

田中「本当に今日は3件出来るんだろうな!!!!」(気合い入れのパンチを社員Aに見舞う)

社員A「きっと、昨日の私には自分自身に対する甘えがありました!!!!ですが今日こそは!!!3件見込を取るまでは帰りません!!!こんな私を皆さん許してくれますか!!!!」(絶叫しながら)

社員一同「許す!!!」

そして社員がそれぞれ絶叫して、目標を達成しない社員には田中から罵声を浴びせられた。

その朝礼は1時間も続き、そのあまりの光景に宮本は何とも言えない恐怖を感じた

田中「はい。今日からうちにきた宮本君ね。挨拶しろよ」

宮本「皆さん初めまして!!!宮本和真です!!!今日からお世話になります!!!」

そうして恐怖の朝礼は終わり、みな大型ワンボックスカーに乗り込み、出かける。そして田んぼの真ん中に下ろされる

田中「よし、今日はこのあたりの地主を攻めるぞ」

宮本「あの・・・・」

田中「何だよ?」

宮本「やり方などは教えて頂けるんですか?」

田中「今日はそうだな・・・おい!!!佐藤。お前宮本連れてけ」

佐藤「はい。」

田中「ここらはこの辺の田んぼを持っている地主が沢山いる。その地主にアパートを建てさせるんだよ。地主に借金させてな。」

佐藤「宮本さん、じゃ一緒に行きますか。」

宮本「あぁ・・はい・・・」

そして、地主に一件一件回る佐藤

ぴんぽんぴんぽーん・・・

地主「何だね?」

佐藤「初めましてNホームの佐藤と申します!!!アパート経営に興味はございませんか?」

地主「一体なんべん断ったら分かるんだ。お宅とは話すことはない」

佐藤「いえ!我々Nホームこそが地主さまに寄り添ったアパート経営が出来ます。今やっているアパートの管理なども・・・」

地主「しつこいぞ!!!帰れ!!!」

・・・

宮本「いつもあんな感じなんですかね?」

佐藤「あぁうん・・・こんな感じだよ。これが100件中99件かな。塩撒かれたり水撒かれたりしょっちゅうさ。」

宮本「これ毎日何件回るんすか?」

佐藤「100件くらい廻るよ。」

宮本「え???」

佐藤「まぁ100件に1件は話聞いてくれるからな。それで本当にアパートに建ててくれるのはそこからさらに30件に1件。」

宮本「じゃ朝礼で行ってた、一日3件って・・・」

佐藤「あんなもん出来る訳ないじゃん。あいつもそろそろ辞めるんじゃない?」

宮本「え・・・」

佐藤「うちは3ヶ月タコ(契約なし)なら会社におれなくなるから。」

・・・

そして、宮本は、夜の8時過ぎまで地主訪問を続けた。

事務所に戻っても、まだ仕事はある。強引にこれから作るアパートの建築の見積もり・・そして地主に出すプレゼンボード。夜の9時を過ぎても誰も帰ろうとしない。

そして夜の11時ごろやっと事務所を閉めた。

佐藤「くあぁぁ!!!今日は早く帰れるな」

宮本「え????」

佐藤「大体うちは1時過ぎがデフォルトだからな。」

宮本「・・・・・」

佐藤「それからさぁ・・宮本さんね。携帯を会社から支給されてるでしょ?」

宮本「はい・・」

佐藤「一応余計なおせっかいかもしれないけど、気を付けた方が良いよ。うちってパチンコ行ったりギャンブル行くのは休日でもだめだから。休日でもその携帯に入っているGPSで見張られてるからね」

宮本「休日もダメなんですか?」

佐藤「それに勤務時間中もずっと、見張られてるからさぼれないし、そして休みの日もどこに行ったのかも筒抜けだから。それから同僚同士で飲みに行ったら即クビだから」

宮本「何でですか?」

佐藤「本社が同僚同士で酒飲んだら、会社の批判をしているとかとみなすんだってさ。」

宮本「は・・はぁ」

佐藤「あと、残業代を請求するのもNGね。みんな残業代なしで頑張ってるから。」

憂鬱な足取りで帰る宮本・・・そして次の日・・・

また田んぼの中に放り込まれる宮本

いちおう、地主を口説くストーリーはこうだ。金持ちの地主は死んだ時に、多額の相続税を支払わなければならない。それは財産の総額によって決められる。ただあえて借金をすれば、その分財産を減らせる。そうして借金をして財産を減らして相続税を安くして、家賃収入も入るという、システムがNホームのやり口である。これだけ聞けば夢のようなシステムに見えるが・・・

何件かにやっと話を聞いてみらえる地主にであう宮本

宮本「こんにちはNホーム宮本と申します」

地主「・・・いっつも来てもらって悪いんだけど、息子が反対するからアパートは建てないよ。」

宮本「いえいえ!!!見積だけでもけっこうですし、見積もりを提出しないと、私上司から怒らてしまうんですよ。」

宮本は、なかなか話を聞いてもらえない中、あえて弱みを見せることで、地主に話を聞いてもらう戦法を取った。

地主「宮本さんがお困りなら・・・見積だけでもねぇ」

宮本「ありがとうございます!村田さま(地主)!!それでは後日お持ちします!!!」

・・・数日後、宮本は村田氏が持つ、田んぼに木造3階建てのアパート建築の見積もりを提出する。

宮本「はい!!!これは見積書です」

村田「言っておくけど、建てる気はないからね。」

宮本「しかし、村田さま・・・将来不安になりませんか?」

村田「将来???」

実はここに来る前、宮本は上司の田中に詰められていた。見積もりをするのなら死んでも建築を取ってこい。入社して1ヶ月まだ数字らしい数字も無かった宮本に、田中は容赦なく当り散らした。そして地主に会う前に、建てる気のない人間をどう落すかシュミレーションをしていたのだった

宮本「今、村田さまの田んぼは、いわば資産価値的に言えば固定資産税を払っているだけのただ金を喰うだけの金食い虫です。」

村田「そうかねぇ」

宮本「それよりも、あの田んぼにアパート建ててある程度収入を見込んだ方が息子さん喜びませんか?」

村田「でも勝手にやると息子も怒るし・・・・」

宮本「アパートを建てた場合と建てなかった場合は、どれだけ相続税が違うかシュミレーションを勝手にしました。」

村田「いつのまにこんな物を???」

宮本「ほら・・・4000万も納税額が変わってくるんです。アパート建てた方が税金がぐっとお安くなるんです。アパート建てれば、毎月収入も入ってくるしで・・・」

村田「でも、こんな駅から徒歩20分以上の所で借りてはいるのかねぇ」

宮本「今は、持ち家より断然アパートに住む人が多いんです。」

村田「でもワシも、もう80歳やし、銀行が金貸してくれんだろう。お宅のアパート建てる現金も持っておらんし、財産はほとんど不動産やし。」

宮本「大丈夫です!!!弊社で提携しています銀行をご紹介致しますので。

何度も村田邸に通う宮本。そんな宮本を見て次第に心を許す村田

村田「いつもいつも悪いねぇ。宮本さん」

宮本「もう決めて頂けましたか?」

村田「そうだね。アパート一軒くらいはいいかな。」

宮本「ありがとうございます!!!」

そうして、村田は息子に内緒のまま、アパート建築計画を立てる。ただ・・・銀行の融資承認が取れなかった。

事務所にて

田中「はぁぁぁ???銀行が貸さないだとぉ???」

宮本「はい・・・」

田中・・「 ポカ!!(宮本の頭をたたく)  アホか!!!他の銀行でも何でも良いから承認とって来いよ。それに承認取れなくても契約は取ってこいよ!!!」

宮本「資金計画は・・村田さんはお金が払えないですよ。」

田中「うちの着工金は580万円か。おい宮本?お前貯金はいくらある?」

宮本「へ???」

田中「一時的に融資承認取る前までに俺とおまえで着工金肩代わりすれば良いだろ。それで村田さんには上手いこと言って、銀行の融資を取ってきてあとで回収すればよいだろうが!!!」

宮本「すいません。貯金なんて100万円もあるかどうか・・・」

田中「じゃぁ親からでも借りてこい!!もう村田さんの件は契約見込で本社に報告しちまってるんだ!!!これで建てれませんでしたって言ってみろ!!!俺もお前もどうなるか分からんぞ!!!!」

金をかき集める宮本、そして田中も自腹を切る。村田と融資承認を取る前に契約をした宮本。その席でも「銀行は何とかします」で逃げおおせた。だが着工してもまだ融資承認が取れない。

田中「まずいことになったな」

宮本「どうしますか?」

田中「しょうがないな。村田のジィさんの持ってる不動産売らせて、それで払わせろ。」

宮本「は・・・・???」

田中「聞こえねぇのか。ジジィに不動産売らせるんだよ。」

宮本「でも絶対宮本さん同意しないですよ。それに建築費を回収できる不動産って自宅くらいしか・・・」

田中「うちの関連会社のアパートにでも住まわせれば良いだろ。とにかくやれ。じゃないと俺もお前も破綻だ。」

そして宮本は村田宅へ・・・

宮本「・・・と言う訳です。村田さん」

村田「ちょっと!!!あんた銀行の方は何とかしますって言ってたじゃないか!!!何でこの家を売らなきゃいけないんだ!!!」

宮本「でも請負契約を結ばれたのは村田さんですよね。ちゃんと約束通り建築費用は払ってもらわないと。」

村田「一体あんた何言ってるんだ?こんなことが息子に知れたら・・・」

宮本「弊社のグループ会社が村田さまのご自宅のご売却活動をいたします。どうかご同意ください。」

村田の息子「貴方がNホームの宮本さんですか?」

村田「康孝!!!何でここに?」

宮本「初めましてNホームの宮本です」

村田康孝「名刺はもらわないですよ。よくもまぁこんな悪い方法で父を騙しましたね。」

宮本「え・・・」

村田康孝「強引にアパート建築の契約をさせておいて、しかも融資を受けられないから自宅を売れって」

宮本「でもハンコを押したのは村田さまですよね?」

村田康孝「おい。舐めんなよ。このクソ詐欺集団が。俺が弁護士やってんの知らないだろ?」

宮本「!!!!!」

村田康孝「この工事請負契約書に書いてあるよなぁ。融資承認が取れなかった場合は白紙解約できるって。」

宮本「しかし既に着工してるんですよ。」

村田康孝「だ・か・ら!!!着工したら白紙解約出来ないなんてどこの条文にも書いてないじゃねぇか!!!もうこの工事は解約だ。もちろん着工金も払わないし、今出来ている建物も基礎も全部お前回収しろよ。」

宮本「・・・・・」(全身から滝のような汗) 

村田康孝「徹底的にお前らはやっつけてやるからな」・・・

事務所にて

田中「んだよ・・ジジィの息子は弁護士だったのか・・・」

宮本「どうしましょう・・・これ・・・・」

田中「俺はこの件は知らん。お前が勝手にやったことだよな?」

宮本「はぁ?」

田中「後の始末は会社は面倒見ないだろうから、全部お前が被れよ」

宮本「ちょっと待って下さいよ。だって請け負ったのは会社じゃないですか」

田中「てめぇも分からない奴だな。会社はお前に全部被らせるぞ。うちはそういう会社だ」

宮本「!!!!!」

田中「とにかく!!!!何が何でもどうにかお前の方で何とかしろ」

村田の息子から、会社に告訴状が届いた。ただNホームは担当者が会社に承認を受けずやったことで一切の関係はないとシラを切る。

そんな中、前日の社員Aは辞めた。そして宮本が入社して半年、この営業所だけでも14人が入社して13人が辞めた。半年で残るのは5%未満しか居ないのがNホームである。

社員Aは、24歳の若手だった。ただ毎日数字を取れない事に罵声を浴びせられ続け、ついに田中は、社員Aにこう切り出した。

田中「お前、親とか土地持ってないか?」

Aはクビになるのを避けるため、親を説得しNホームでアパートを建てさせた。ただ立地は悪く借主も見つかりにくい場所だ。こうやって入った新入社員の親族を食い物にして大きくなったのがNホームである。Aが用済みになった後は、毎日耐え難い罵声を浴びせられ、そしてうつ病になって辞めた。これが常套手段なのである。

入社してまともに家に帰れない宮本。次第に夫婦の会話も減っていった

里恵はたまらず「もう辞めた方が良いんじゃない?」と聞いても宮本は「いや。石の上にも3年だし、ここでやめるわけには・・・」と言う。

そんな憂鬱な毎日を送る中、村田の息子から電話がかかってきた

宮本「宮本です」

村田「あぁ。村田だけど。」

宮本「今日はどういったご用件でしょうか?」

村田「ちょっと色々聞いたけどさ・・・宮本さん、あんたもっと賢くなった方が良いよ」

宮本「それはどういう意味ですか?」

村田「分からない奴だなぁ。一緒に戦おうって言ってるんだよ。」

宮本「何を????」

村田「あんたさぁ、このままそのクソ会社に利用されて、自腹切って精神すり減らして生きていくのかい?」

・・予想だにしない村田からの連絡・・・一つの光が垣間見えた瞬間だった。

宮本は、村田に呼ばれていた。

村田(父)「やぁ。宮本さんじゃないか。お茶でも飲んでいきなよ。」

宮本「・・・村田さま!!!この度は申し訳ございませんでした!!!」

村田(父)「わしもさ、あれから息子にひどく怒られちゃってさ。大変だったけど、でも家を売らなくて済んでほっとしてるんだよ。」

宮本「なぜ、こんなことをした私に優しく接してくれるんですか?」

村田(父)「なんとなくなんだけど、あんたが悪い人に思えなくてね。多分悪いのは会社なんだろ?今回の件はお互い災難だったねぇ。」

宮本「・・・・」思いもせず、宮本からとめどなく涙があふれた

村田(父)「こういうのもなんだけどさ。もうあんな会社にいちゃいけないよ。俺の知り合いの社長に話をしたらさ、あんたみたいなまじめな人が是非欲しいとか言うから、一度面接に行ってみたら?」

宮本「・・・ありがとうございます。」

村田(父)「あんな酷い会社に1年近くも居たんだ。宮本さんに根性はあるのは分かるからね」

宮本「はい。一応、もう辞める方向で考えています。」

村田(息子)「なんだ、もう宮本さん来てるのか」

宮本「こんにちは。」

村田(息子)「それで、もう覚悟は決めたの?」

宮本「はい。全力で戦います。」

村田(息子)「そうか。ならこれから作戦を立てて行こうか。」

小一時間後・・・

村田「・・・・と言う訳で、頼むよ。宮本さん。」

宮本「えぇ。ここからが勝負ですね。」

・・・・・

ここはNホームの営業所

宮本「田中支店長」

田中「何だよ。」

宮本「今日付けで退社致します。辞表も用意しました。」

田中「ちょっと待てよ。お前、あの村田のジジィの件、どうするんだよ!!!」

宮本「辞めてしまえば、私には関係のある話ではありません。」

田中「てめぇ!!!逃げる気かよ、」

宮本「逃げるとか何の事だかさっぱり分かりませんね」

田中「お前、辞めるんだったら、俺が建替えた着工金の半分290万円返せよ。それから工事着手した建物の基礎の工事費用とかも下請けから来てるんだぞ。しめて1000万円近い金額だけど、お前払えってから辞めろよ。」

宮本「それを私に払えと言うのですか?」

田中「当たり前だろ!!!てめぇ舐めてんじゃねぇぞ。さっきからよ。」(田中机を蹴り上げ、そして、宮本に鉄拳を見舞う)

宮本「・・・これで分かりました・・・すみません。今日はこれで失礼いたします。」

田中「おい!待てよ!話は終わってねぇぞ!!!逃げんなよ。」

宮本、田中の静止を振り切って帰宅する。

そして、次の日に会社に来ると驚きの事が起こった。なんと会社にホワイトボードにでかでかとこんな事が書いたA4の紙が貼ってあった

罪状~宮本和真~

上記の物は、Nホームのお客様に迷惑をかけ、会社に多大な不利益を被らせても、反省もせず、あまつさえ逃げようとしています。一人の責任感の有る社会人としてこんな事が許されるでしょうか?会社を辞めても今のご時世次の仕事など有りません。家族が不幸になっても良いんですか?皆さんも彼のようにならぬよう、彼のような犯罪を犯し、周りの人間を不幸にしてはいけません。

・・・・

田中「おはよう。宮本さん。」

宮本「これは何ですか?」

田中「お前みたいな犯罪者を懲らしめる為に皆で作ったんだよ。なぁ?」

(ほかの社員たちは気まずそうに眼をそむける)

宮本「・・・・ははははははは!!!!」

田中「何が面白いんだ?お前これからどうなるか分かってんの?」

宮本「田中さん、いやね。こんな馬鹿にアゴで使われていた過去の自分に笑えて来てね。」

田中「あぁ?てめぇ今なんつった?」

宮本「馬鹿って聞こえなかった?」

次の瞬間、田中の蹴りが宮本に飛んだ。すっとばされる宮本。だが宮本はまた笑った。

宮本「あんたもう終わりだよ。昨日さ・・俺を殴っただろ。もう今朝警察に被害届出したから。それに今のでもう決定的だな。」

田中「馬鹿か?お前は?これは指導だ。」

宮本「馬鹿はあんただよ。それに昨日の話も録音しといたからな。もう弁護士先生に渡して、それも警察に出したよ。これ弁護士先生に聞いたら、十分脅迫罪で、あんたをしょっぴけるってな。」

田中「・・・何言ってんだ?お前?」

宮本「ここまで言ってもわかんねぇか。警察も事情をもうすぐ聞きに来る。部下を殴って脅迫して警察に事情聴取されたなんて言われたら、上はどう思うんだろうな。」

田中「何訳わかんねぇ事いってんだ。もういっぺん殴られてぇか?」

宮本「ちょっと弁護士先生に電話かけるわ。・・・はい、もしもし先生ですか?えぇ・・田中がまた僕に暴力振ってるんですけど、どうも自分の原状が分かっていないみたいでね。代わってもらえますか?」

村田「こんにちは。田中さん、村田の息子です。」

田中「え?・・・弁護士先生って・・・」

村田「弁護士の村田康孝です。今は宮本さんの今回の件で担当させてもらいますけどね。まーあんたやっちゃったね。」

田中「ちょっと待って下さいよ。これは社員教育の一環で・・」

村田「そんな言い訳が警察に通用すると思ってるのか?もう、これであんたも終わりだ。もうすぐ警察が来る。どうするよ?これから?」

田中「宮本!てめぇ!はめやがったな!!!!」

宮本「本当にあんた馬鹿なんだな。今の状況ちったぁ考えろよ。」

そして、警察が来る。

警察「え~田中栄一郎さんですね・・・あ。宮本さんもいますね。ちょっとこちらの宮本さんから被害届が出ている件も踏まえて、今から任意同行にご協力頂けないでしょうか?」

田中、全身から汗が吹き出し、小刻みに震えはじめた

田中「いやいや!!!待て待て待て!!!!ちょっとこれおかしいって!!!!」

警察「まぁそういうのも一旦ここではなく、警察署でお聞きしましょうか?」

田中、顔面蒼白になり、警察に連れられて、警察署へ。

・・・

宮本、村田に電話かける

宮本「あ・・・もしもし村田先生、お世話になります。」

村田「何か上手くいったみたいだな。あんたも痛い思いはしたが、慰謝料も治療費も含めて田中から相当とれるぞ。」

宮本「これも全て 村田先生のおかげです。」

村田「ま、こんなもん最初は小手調べだ。さて、次は本丸だぞ。」

宮本「はい。ここからが本番ですね。」

警察からの事情聴取後、Nホームの本社に呼ばれる田中。そして役員である一枝常務と話す。

こんこん(ドアをたたく音)  

一枝「はいりたまえ」

田中「はい。熊谷支店支店長の田中です。この度は申し訳御座ませんでした」

一枝「まーうちは、厳しい社風の会社ではあるが、さすがに それでも暴力はいかんなー」

田中「申し訳ありません。」

一枝「で、その宮本とか言う社員は何と言っているんだ?」

田中「はい。宮本はこの件で私を告訴すると言っています。全ては私の責任です。」

一枝「君は知らんのか?」

田中「今回の暴力沙汰の件ですか?」

一枝「本当に知らんみたいだな。今わが社にその宮本とかいう社員が、村田とかいう弁護士使って訴訟起そうとしてるんだよ。」

田中「えぇぇぇ???」

一枝「何でもこの間契約したアパートの工事請負契約の着工金だが、実は地主が払った体になっているんだが、実際は君とその宮本とかいう男が払ったそうじゃないか。」

田中「・・・誠に申し訳ありません!!!!」

一枝「申し訳ありませんじゃないんだよ。しかも、君らが勝手に融資受けてないのに強引に工事進めて、その基礎とか作った下請けの支払も、わが社に払わせようとしてるみたいじゃないか。」

田中「・・・これは全て私の責任です。」

一枝「そうだろ?わが社も君とその宮本と言う男に騙されたようなものだからねぇ。着工金は実際に工事始まってるから返せないしねぇ。それに下請けの支払のお金どうするの?えぇ?」

田中「・・・・私が支払います。」

一枝「あ。そ・・・君がそこまで言うのなら止めないが。とにかく!!!私もわが社もこの件は関知しないからな。君が全て責任をもって片づけてくれたまえ。」

部屋から出た後。田中は思わず「アー――!!!」と叫んだ。実はこの田中、契約を多くとってはいたが、このような強引に工事を進めた際にかかる費用を、多く自分で負担していた。そして実は、クレジットも使い切って、借金もあった。既に田中自身、ブラックリストに載っていた。ただ田中も47歳。自腹切って自爆営業を続けていたが、次が無いという危機感のため、こうやって会社の言いなりになるほかなかったのだ。だが・・・今回の一枝との話が終わり、何かが田中の中で吹っ切れた。

田中「・・・もしもし。」

宮本「何ですか?田中さん。また何か嫌がらせやるんですか?」

田中「すまん!!!申し訳なかった!!!」

宮本「・・・今更遅いですよ。告訴は下げませんから。」

田中「いや。自分でやった事の罪はしっかり償うつもりだ。ただそれでも・・お前には悪いことをした。」

宮本「何ですか?急に?」

田中「お前にはちゃんと慰謝料とかそういうのは払う。でもその代わりに・・・俺に村田先生を紹介してくれ。」

宮本「え?」

田中「もう全て吹っ切れたよ。俺はNホームを辞める。そして今回の件で村田先生にお世話になろうと思う。」

宮本「・・・分かりました。じゃ言いますね・・・でもどうして???」

田中「実は俺・・目が覚めたんだよ。恥ずかしい話だが、俺自身1500万くらい借金があるんだ。それも全てNホームの建築でかぶった金額だ。」

宮本「え???」

田中「契約を取ったときのボーナスで支払おうと思ってたけど、でもそれでも全然間に合わなくてな。もうこのままじゃ、俺、Nホームに食われて骨も残らないと思ったんだ。」

宮本「そうだったんですか・・・」

田中「多分さ、きっと村田先生だったら、いくらか取り戻してくれるんだろう?それに俺が建替えた着工金の290万円も返ってくるんだろ?」

宮本「・・・私もそう思って、村田先生に頼んでいます。」

田中「また、この件が終わったらお前にちゃんと会って頭を下げたい。」

宮本「分かりました。何かこういう話聞けてすごく嬉しかったです。」

・・・・

そして、しばらくして、田中、村田に電話かける

村田「はい。村田です。」

田中「もしもし、田中です。」

村田「あぁ。宮本さんから聞いてるよ。」

田中「実は、さきほどNホームの重役サンと会ってきましてね。」

村田「何の話してたの?」

田中「実は全部録音してきました。」

村田「・・・ちょっと今から、田中さん事務所に来れるか?」

・・・田中、村田の事務所に行く。

田中「はじめまして。村田先生。田中です。」

村田「こうやって会って話するのは初めてだね。とりあえず録音した会話きかせてもらおうか。」

田中「はい。これです。」

・・・・

村田「馬鹿だなーこいつ。」

田中「お金返ってきそうですか?」

村田「あのさー・・・そもそも会社で請け負った話を何で、一個人の会社員が被らなきやいけないんだ?」

田中「はい・・・本当に今まで自分がしてきたこと、恥ずかしい限りです。」

村田「もうこういうヒドイ会社に居ると、まともな判断が出来なくなるんだな。こんな事小学生でも分かる理論なのに。」

田中「本当にどうかしてました。」

村田「田中さん、あんた給与明細見せてよ。」

田中「はい・・・でもなんで?」

村田「あのさー・・・もう無知で居るのは辞めようよ。田中さん。ほれこれ・・・残業代払ってないじゃん。しかも田中さんこの一年何日休んだの?」

田中「多分10日も休んでないです。でもタイムカードは定時で押されてたんですよ。」

村田「・・・・田中さん、それでもね。会社で業務してたらそれは会社が残業代払わないといけないの。しかも年105日の休みって雇用契約で書いてあるのに、10日も休んでないとなると、残りは休日出勤で全部請求出来るぜ?」

田中「え・・でもうちは労働法関係ないとか言われましたけど・・・」

村田、頭をかきながら、呆れたように話す

村田「話すのもバカバカしいんだけど、労働基準法ね。これ守らなくてよい会社は世の中1社も無いわけね。だって街中で人殺しても、『俺は日本の法律は関係ないから無罪だ』なんて言って、お巡りさん許してくれるの?ほんとこれ、それレベルの話だから。」

田中「そ・・・そうなんですか!!!」

村田「宮本さんもその辺理解してなかったみたいだし、この話聞いて残業代と休日出勤の分も請求するつもりだよ。」

田中「でもタイムカード定時で押されてるんですけど、それでも請求できるんですか?」

村田「田中さん、お客さんとか業者にメール送ってるでしょ?」

田中「は・・・はい。」

村田「そのメールの送信履歴全部携帯で撮っておいて。それ確か会社のパソコンでしかログインできないはずだから。もし夜の12時に送ってたりしたら、十分それ残業の証拠になるから。」

田中「そんな事出来るんですか!!!」

村田「出来るに決まってんじゃん。まぁ悪徳会社をやっつけるには、こんな風に着々と証拠固めないとな。あと残業代と休日出勤費用をNホームから取れたら、一応俺がもらう手数料はその20%だけど、それでも良いかい?」

田中「是非お願いします!!!!」

そして、田中と宮本は、アパートの着工金の返還及び残業代の請求をNホームにした。

そして、その後、Nホームの取締役会に呼ばれる村田

村田「こんにちは。村田です。」

一枝「初めまして村田先生。お目にかかり恐縮です。」

村田「今回は宮本さんと田中さんの代理で来ました。御社の言い分は全て私を通しておっしゃって下さい。それから分かっていると思いますが、私を飛ばして両名に接触を持つのは違法行為になりますから、そこはどうかご承知おき下さい。」

一枝「それでね・・アパートの着工金なんですけど、これ田中君と宮本君が支払った証拠ないよね?これ普通に考えたら返す必要ないですよね?」

村田「はい。彼ら二人に返す必要は確かに無いです。10000円札に名前が書いてあるわけでもないし」

一枝「じゃ、この問題はもう解決っと。」

村田「ただ、これは融資特約があり、ご存じのように融資がつかなかった案件であり、地主の村田氏、私の父に返金する義務が御社にはあるかと思いますが」

一枝「何言ってんの。あなたのお父さん実際は払ってないないじゃないの。」

村田「さきほど貴方が言ったように、これ父が御社に支払わなかった証拠はないですよね?しかも領収書の宛名は父だ。」

一枝「何言ってんだ!!!だからおたくの父親は支払ってないだろ!!!」

村田「あんたも分かってないな。それが裁判で通用すると思うか?だからうちの親父に580万円返金しろと言っているんだ。それで父から二人に半分ずつ支払えば良いわけだ。」

一枝「そんな言い分通ると思ってるのか!!!」

村田「それは裁判官が判断する事だからな。私が決める事じゃない。それから、既に作ってしまった基礎だが、ちゃんと撤去して引き渡してくれるんだろうな。」

一枝「そんな着工してたなんて弊社は知らんよ。勝手に田中がやった事など、関係ない。」

村田「・・・Nホームで建築確認(建築許可)を下しておいて、しかもそれを会社は知らないだと?」

一枝「下請け業者への支払い等出来んよ。」

村田「ふーん・・・実はな。基礎をやった業者も、俺に仕事を依頼してきてな。」

一枝「何だと?」

村田「しめて基礎の施工費用420万円が未払いで困ってるんだとよ。」

一枝「うちは知らんよ。そんなもん田中君にいいたまへ。」

村田「もう業者もNホームで仕事したくないから、支払い請求を俺を通してするんだとさ。事情を話したら、業者も田中さんでなく御社に請求するって息巻いてたよ。ま、この件も裁判官に冷静に判断してもらえば良いしな。」

一枝「!!!!!!!!!」

村田「下請け業者も、Nホームの仕事は利益が出ないから嫌がってたんだな。喧嘩する相手を間違えたな、お宅らも。」

・・・・

宮本は、残業代含め240万円の未払い費用が認められ、自腹を切った290万円の着工金も村田(父)経由で帰ってきた。また田中は残業代の支払額が500万円を越え、しかも着工金など自腹を切った金額1100万円の返還に成功した。

宮本「本当に村田先生のおかげです。ありがとうございました。」

村田「俺を誰だと思ってるんだ?」

宮本「もう本当にNホームへのつめ方がヤクザでしたね。完全に(笑)」

村田「はははは。ヤクザより俺の方がよっぽどタチが悪いよな。」

田中「まさか。ここまでやっていただけるとは。約束の2割の支払ですが・・」

村田「今回、田中さん、あんたがNホームから取れたのが1597万円だ。報酬は97万円で良いよ。」

田中「え?でも2割って・・・」

村田「あんた1500万円ちょっきりの借金があるんだろ?それ返せよ。ちゃんと。2割なんて話は知らんよ(笑)」

田中「あ・・・ありがとうございます!!!って『知らんよ』って一枝常務みたいですね。」

村田「真似したの分かったかい?」

宮本「それから就職先の紹介ありがとうございました。」

村田「礼は親父に言ってくれ。それに関しては俺は何もしてないからな。」

田中「しかし、本当に宮本・・・すまなかった」

宮本「もう貴方への告訴状も取り下げたし、それに一緒に戦ってくれて、こういう結果になりましたし・・・今となっては僕も『知らんよ』ですね(笑)」

田中「はははははは。」

村田「そういう訳で!!!お二人さん、飲みに行くかい?」

宮本「もちろん村田先生の驕りですよね?」

村田「あほか!!!そこは割り勘だ」

宮本「あ・・弁護士がアホって言ってる!名誉棄損ですよ!!!」

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