演劇の脚本考えてみたその③・・独演的なもの「あなたおかしいですよ」
Mr.あいろに・・・常に世の中を斜めに見たがる、評論家、知ったかぶり、見栄っ張り等々色々と難のある男である。常に書斎に居てコーヒーをすすっている。
何か「懐かしいネタ」について熱く語る男である。
・・インタビュアーが訪問し、そしてMr.あいろにに、インタビューするだけの話。ただインタビュアーのセリフは出てこない
あいろに「何ですか・・・あなた何か用ですか?」
あいろに「うん?この私の飲んでいる珈琲ですか?これはね・・ジャコウネコ珈琲と言ってね・・ああ・・あなた知ってるんですか?」
あいろに「ずずず・・・・これはね。あなたみたいな貧乏人ごときが飲めるものでもないんですよ。えぇ。私のような高貴でハイクオリティで高品質な人間にしか飲むことが許されない・・・ブフォ!!!!!飲みながらしゃべるとムセますね・・・・」
あいろに「・・・・あなた何が言いたいんですか?そうですよ!!!いくら高いコーヒーっていっても、これ猫のウンコから出した珈琲ですよ!えぇ・・それを高級だと世間で言われてるから、真に受けてクソ高いお金払って飲んでいるのの何がいけないんですか!!!!あなたおかしいですよ????」
あいろに「・・・で、今日は何の話を聞きに来たんですか?あなたのような教養の無い人間に話す事など・・・ぐびぐび・・・ってあなた今なんと???」
あいろに、飲んでいた珈琲を置く
あいろに「今、あなた何て言いました?志村けんって言いましたか?今日は志村けんさんの話をしろと!!!!」
あいろに「全く、この時期だからタイムリーなネタだと思って聞いてくるあなたの浅はかさには呆れるばかりだ・・・えぇ・・でも良いでしょう・・語りましょう・・・」
あいろに「皆さん、何か追悼番組でもね・・『誰からも愛されたコメディアン』とか故人の事を言うのは、すごい違和感覚えるんですよ。えぇ。志村さんって僕らの世代からすれば、そういう存在じゃないんです。」
あいろに、目を遠くに向ける
「あいろに私は、カトちゃんケンちゃんご機嫌テレビとか、志村けんの大丈夫だぁを見て育った世代ですから・・」
あいろに「あなたは若いから知らないでしょう?昔は、PTAとか親から、めっちゃ志村さんが『嫌われてた事を!!!!」
あいろに、踵を返す
あいろに「・・信じられない???ふっ・・貴方は何てバカな人間なんだ。どうせ、志村動物園ぐらいからしか志村さん見てないんでしょう?あなたは彼をただの優しくて、気の良いおじさんくらいにしか思ってない!!!そんな浅はかな考えだから、志村けんさんみたいな、絶妙にナイーブなネタを気軽に振れるんだ!!!あなたは!!!!」
あいろに「僕らの子供のころは、志村さんは加藤茶さんと一緒に、全力で下品に笑いを取っていました。えぇ。小学生の悪ふざけみたいな感じの笑いです。それを良い年こいた、おっさんたちがテレビでやってくれてるんですよ?僕らからすれば彼らはまぎれもないヒーローでしたよ。PTA上等かかってこんかいってレベルですよ。」
あいろに、かかってこんかいポーズをとる。
あいろに「ただね・・・牛乳吹いたり、裸のお姉ちゃんだしたり・・・えぇ今じゃ放送できないネタもありましたよ。だから親とか先生から嫌われたのなんの。子供に見せたくない番組ランキングも常に一位で独走してましたよ。大丈夫だぁなんかは。」
あいろに「だって良い歳こいたおっさんが、『ぱいのぱいのぱい、ちんちろりん』って踊ってるんですよ?しかもオチがだっふんだ!!ですよ?これを『くだらない』という形容詞以外でどう表現するんですか!!!」
あいろに、机を殴る。そしてあいろに、興奮したので、冷静になるためコーヒーすする。
あいろに「で、1990年後半くらいでしょうか・・さすがに志村けんさんの下ネタもみんなが、飽きてきて、ダウンタウンみたいな「ガチで頭を使って笑いを取りに来る」芸人に活躍の場を奪われ、僕らも中学校になると『志村けんってもう笑えないよね』とかいうようになりましたよ。」
あいろに「そして、そのまま何年か見ない日々が出てきて、年末にたま~にバカ殿様で見る機会があるようになって、何か正直、お笑い的には『オワコン』感はありましたよ。当時は。」
あいろに「ただ、そこから志村動物園みたいな感じで、万人受けする優しいおじさんキャラにシフトしていったという流れです。」
あいろに「だからね・・・ほんの20年、30年前は『志村けんって下品だから子供に見せたくない』とかおばちゃん達が言ってたのに、亡くなるともう、そうやって『嫌われてた過去』も無かったことにされるんですよね。えぇ。」
あいろに「・・・足りない脳みそでも、ここまで説明すれば理解してもらえるでしょう。我々にとって志村けんとは何だったのかを」
あいろに「思い出しますよ・・・ドリフで、志村さん出てないコントは子供心ながら笑えなかったのは。雷様コントとかまじ意味不明でしたもん。高木ブーがウクレレ弾いてて何が面白かったのか意味分からなかったし、いかりや長介がメンバーに嫌われているって言うのも意味わかんなかったし、仲本工事のキャラもどういうのかよく分からなかったし・・って・・何ですって?志村けんの話をしろって?」
あいろに、再び外に目を向ける。
「(コーヒーすする)・・・まぁ志村けんという人間は、一言でいえば、難しい事を考えんでいい笑いを取る人間です。思い出せば、何か鋭い事とか、頭ひねったようなネタとか思いつかないですもん。えぇ。」
「ただね・・・今みたいな、頭使ってひねり出さないと笑いを取れないコントよりか、志村さんのコントはね。下らないがゆえに肩がこらないコントでしたよ。今のバラエティよか空気読まなくても良いし、何か独特の緩さは有りましたよ。えぇ。小学生のクソガキにとってみれば、志村けんさんの番組は「ユートピア」みたいなもんでしたよ。」
「ダウンタウンの松本さんみたいな、才能あふれる鋭いボケとかで笑いをとる人とは対局ですよえぇ。多分、笑いの才能で言えば、ダウンタウンの松本さんに志村けんさんは遙かに劣る!!!だが、それでも私は志村けんを尊敬してやまないのですよ。これ貴方分かります?」
アイロニ、インタビュアーをにらみつける。
「彼は、テレビでやるお笑いは一部の才能の人間にしか出来ない事実を否定したんですよ。えぇ。言っちゃなんですが、人様の前にさらすお笑いの敷居が引くというかね。悪ふざけだけで笑いを取った唯一のコメディアンですよ。クソガキの悪ふざけを大人が真剣にやってくれてるという、何か子供の見方をしてくれてる大人・・みたいな感じはありましたよ。当時はもっと親も先生も厳しかったし、窮屈な感じがした世の中で、志村さんは悪ガキにとって心のオアシスでしたよ。」
「ま、後にも先にも何も考えず、肩もこらさず、とにかく『くだらねぇ』笑いを取り続けたのは志村さんだけですよ。えぇ。」
「・・・・うん。少し話過ぎましたかね・・・」
(コーヒーすする)
「あぁ・うん?コーヒーは別にウンコの味はしないですよ。」
終わり。